第1章 時空を超えて
翌朝起きると、そこはやはり食事処『四季』の二階のままだった。
瑞希「............」
(夢じゃ、なかったんだ......)
ため息をつくものの、私は気を取り直して起き上がる。
(悩んでばかりいられない。とにかく情報を集めるためにも、働かないと......)
そうして布団をたたみ支度を整え始めると、私はふと考えた。
(飲食店でのアルバイト経験はあるけど、少し不安だな)
そうして自分の唇に、そっと触れる。
瑞希「あ......」
(お店に出るんだから、少しくらいはきれいにしたほうがいいよね)
支度を整えていると、不意に部屋の戸が叩かれた。
ユキ「おはよう、瑞希!ついに今日からお仕事ね!応援に来たわよ」
瑞希「ユキちゃん......」
ユキちゃんの笑みに、いつの間にか緊張していた心が解けるのが分かる。
(なんだか少し、ほっとしたな)
考えていると不意に、ユキちゃんが私のかをを覗き込んだ。
ユキ「あら、紅をつけたの?」
瑞希「うん......少しでもきれいにしたほうがいいかと思って」
するとユキちゃんが笑顔でうなずいてくれる。
ユキ「いいわね♪紅は女を引き立たせるのよ!これでお客さんを、虜にしてきちゃいなさいよ」
私は恥ずかしさに頬を染めながらも、頷き答えた。
瑞希「ありがとう」
(気持ちを切り替えることができたみたい。これから頑張らないと......)
瑞希「じゃあ、行ってきます。ユキちゃん」
ユキ「頑張ってね♪」
ユキちゃんが帰っていくと、私は台所での準備を整え、のれんをかけたばかりのお店に立っていた。
(私の仕事は、女将さんの代わりに台所や店の切り盛りをすること......)
休憩時間や休みの日は、女将さんが店に立ってくれることになっている。
(とにかく、まず仕事を覚えないと)
考えているとふと、座敷の上に人の姿を見つけた。
瑞希「っ......え」
(いつの間に......)
驚き近づくと、私は気付く。
(あれ、この人って......)
瑞希「土方、さん......?」
恐る恐る顔を覗き込み、呼びかける。
土方「んー......」
土方さんは眉を寄せ唸り声を上げるものの、起きる様子はなかった。