【降谷零・安室透】そばにいさせて《ゼロの執行人編》
第2章 ゼロの執行人
「いらっしゃいませ」
さくらがポアロの扉を開けるとカランカランという音と共に店員である榎本梓がにっこりと笑みを浮かべて出迎えてくれた。
「おはようございます」
「わー、澪さんおはようございます」
カウンターに案内してくれる梓とも通ううちに顔見知りになり、仲良くなった。久しぶりですね、なんていう軽い会話を交わす。
「執筆が忙しくてこもりっきりだったんです」
「澪さん、いらしてくれたんですね」
席に座ると同時に声をかけられ目の前にとん、と水を置かれる。カウンターごしに人の良い笑みを浮かべるのは先程分かれた安室だった。エプロンをきっちり着て清潔感のある彼はどこからどう見ても喫茶店の従業員へと変わっていた。
「はい、モーニングセットお願いします」
彼女も身体が資本の仕事なので基本的に食事はきっちりと食べるようにしている。それでも、仕事が忙しくなると片手で食べられるコンビニのおにぎりやサンドイッチばかりになってしまう。さらに極限状態になるとカロリーメイトやウィダーインゼリーに頼りがちになってしまう。基本的には自炊をするのだが忙しいとそうもいかない。立場上、信頼のおける場所でしか外食できないため、気兼ねなく食事ができるポアロは非常にありがたい存在でもあった。
今は安室透になっている目の前の上司が、喫茶店へ潜入してくれたことに思わず拝みそうになるのをぐっとこらえて、スマホのニュースアプリを起動してざっとニュースに目を通す。どんなことが国家を脅かす犯罪に繋がるか分からないため、常に情報収集することは大事だ。
大方の情報はニュースになる前に自分たちの元へ届くが、小さい事件や事故で処理されたものは弾かれることが多く、そこにどんな凶悪犯罪が隠れているか分からないために澪は朝昼晩と必ずニュースに目を通すようにしていた。