【降谷零・安室透】そばにいさせて《ゼロの執行人編》
第2章 ゼロの執行人
しばらく無言でいたがたまらずにさくらがチラリと降谷の様子を伺う。
「…………はぁーーーーっ……」
それはそれはもう、長いため息だった。心底あきれた、そう言われているような降谷のため息にさくらは再び俯いてぐっと拳を握りしめる。
「本当に、心配したんだからな……お前まで、俺の側から居なくなるのかと思った……」
気づけばさくらは降谷から抱きしめられていて、思わずばっと顔を上げる。しっかりと背中に腕を回されていて相手の顔は見えないので、その表情を窺い知ることはできない。でもその肩は小刻みに震えていた。
さくらも降谷の背中に手を回して落ち着かせるようにぽんぽんと撫でる。
「すみません……」
「確かに俺たちは仕事上無茶もしないといけない。だが、今回は事前に防ぐこともできたはずだ。無茶をすることと1人で突っ走ることはわけが違うからな」
「う、は、はい……返す言葉もないです」
降谷はさくらを離すと向き合い、視線を合わせる。
「それで、身体の傷の具合は?階段から落ちといて何ともありませんってことはないだろう?」
「全身の打撲と足を捻りました。頭も打ちましたが、今日の精密検査では何ともないと言われました。とりあえず3日ほど入院してまた検査するそうです。いまは痛み止めが効いてますが……切れたら多分、全身痛いですね」
「まったく、お前は……」
わしゃわしゃと降谷は笑みを浮かべてさくらの頭を撫でる。先程までのブリザードの微笑みではない。目を細め、愛しいものを見る優しい瞳にさくらも思わず赤面した。