【降谷零・安室透】そばにいさせて《ゼロの執行人編》
第2章 ゼロの執行人
夢を見てるのか誰かに頭を撫でられているような感覚がして気持ちがいい。ふわふわと意識が揺れてだんだんと浮上してくる。
「ん……」
さくらがうっすらと目を開けると誰かが居るようで、頭を撫でてくれていることが分かる。普段なら反射的に危険を察知して飛び起きる。何なら相手に拳銃を突きつけるのだが、頭を撫でる手つきの優しさに安心しきっていた。
「……ふる、や、さん……?」
ぼんやりとした視界に見慣れたミルクティ色の髪が写り、擦れた声で相手の名前を呼ぶ。
「悪い、起こしたか」
すまなさそうな声を出す降谷にふるふると首を左右に振る。その間も降谷はさくらの髪を撫で続けていて、さくらは気持ちよさそうに目を細めた。
しばらくそうしていると、さくらの意識がだんだんとはっきりしてくる。しっかりと目を覚ましたさくらは降谷に手を伸ばす。
降谷はしっかりとその手を握りしめた。
「降谷さん、無事でよかった」
「それはこっちのセリフだ……風見から連絡をもらった時、心臓が止まるかと思った」
「ご心配をおかけしました……降谷さんの怪我の具合はどうですか?」
さくらはベッドサイドのリモコンを操作し、上半身を起こして降谷としっかり視線を合わせる。
「ああ、左肩を負傷して縫ったが……問題ない」
治療が終わった後、降谷は二宮が用意していた服に着替えていた。ジーンズに白いシャツ、紺色のパーカーといったラフな格好で降谷の実際の年齢よりもぐっと幼く見える。