【降谷零・安室透】そばにいさせて《ゼロの執行人編》
第2章 ゼロの執行人
日下部検事が怪しいと睨んだもののノーアの使用でアクセスポイントは絞り込めず、NAZUに協力を依頼しようにもはくちょうの帰還で忙しいNAZUがすぐに請け負ってくれるとも思えない。
東京地検を張り込めば日下部検事に会えるかもしれないが、証拠がないままでは相手に会った所ではぐらかされて終わる。さらに、こちらが気がついていると悟られれば逃げる隙を作ってしまう。
それに、動機も分からない。分からない、というよりは半信半疑だ。
本当にそのことで多くの人の命や人生を奪ったのだというなら…
「そんな自分勝手な正義なんて認めない…」
さくらは拳をぎゅっと握りしめた。街を歩き回っていても仕方ないと警視庁へ戻ろうとした時、周辺でおかしな現象が起こっていることに気がつく。
車は急に止まってぶつかり、コンビニのレンジや室外機から炎があがる。持っているスマホが発火した人もいるようで街はパニックになりつつあった。
「家電……車のナビ……今どきはネット接続できるものが多い……IOT?家電……まさか!!」
急いで自分のスマホでニュース速報を確認しようとしたところで二宮から着信が入る。
「もしもし」
『相沢さん、大変です。都内中で家電から火が出るなど、謎の故障が相次いでいます。通報がキャパオーバーして警視庁はパニック状態です』
「これは都内だけの現象なのね?」
『そうみたいです。県警のデータベースに侵入して確認しましたが、同様の現象での通報は現時点でありません。都内の中でも限られた地域からの通報が相次いでいるので、ごく限定的かと』
「これは、おそらくIOTテロ!インターネット……ノーアを使った無差別テロよ!二宮くんメインのパソコンは現象が落ち着くまで、絶対に電源を入れないで」
『わかりました』
「私はすぐにアクセスポイントの解析と降谷さんへの報告を…キャッ!」
さくらが使っていたスマホもジジっという音をたて、熱を持って画面は真っ暗になった。あいにく、今日はプライベート用のスマホを持ち合わせていない。適当な電話ボックスを見つけて降谷に電話をしなければと思いつつも、パソコンが生きているうちにアクセスポイントを絞りこまないと太刀打ちできなくなると考え、道の端に寄りパソコンを起動させる。