【降谷零・安室透】そばにいさせて《ゼロの執行人編》
第2章 ゼロの執行人
「一体誰が……」
風見は眉間に皺を寄せて自分の失態に悔しそうに声を絞り出す。
コナンは我に返りスケボーを取り、降谷の姿を追ったが追いつけずにその姿は見えなくなってしまった。
その後を風見とさくらが追い橋の所までやってきた。
「盗聴器は君が仕掛けたのか?……いや、まさか……こんな子供が」
もし目の前の子供が犯人だったとしても風見には盗聴器を仕掛けられる理由が分からなかった。すると、コナンが淡々と口を開く。
その口調と声色はいつもの小学生らしい可愛らしいものではなく、少し低くどこか大人びたものだった。
「安室さんは、全国の公安警察を操る警察庁の『ゼロ』安室さんだけじゃない、澪さんもそうだ」
「!」
「そんな安室さんや澪さんに接触できるのは、公安警察の中でも限られた刑事だけ。それが風見さんと堂上さんだったんだね」
的確に降谷やさくらの正体を言い当てたコナンに風見は畏怖の念すら感じて目を見ひらき、一歩後ずさる。
「……君は一体、何者だ」
「江戸川コナン、探偵さ」
先程から雲行きが怪しくなってきた空からいよいよポツポツと雨粒が降り出した。コナンがこれ以上話はないとでも言うように橋を進もうとすると、手すりによりかかった風見が口を開いた。
「君の言う、安室という男は……人殺しだ」
「……!?」
コナンは立ち止まって振り返る。風見の近くに立っていたさくらは表情を固くして言う。
「風見さん、その話は……」
「去年、拘置所で取り調べ相手を自殺に追い込んだ」
「自殺って……」
「風見さん!!」
さくらが思わず厳しい口調で風見を制すると、彼は無言になり雨粒が落ちる水面を見つめた。
「……悪い。子供に言うことじゃなかった。だが、なぜか君にはこんな話ができてしまう。変わった子だ。」
そう言うと風見は雨が降る中を歩き出す。さくらはその後を着いていき、コナンが見えなくなったところで立ち止まった。
「風見さん、この国を守るんでしょう?」
後ろからかけられた言葉に風見は振り返り口の端を持ち上げた。
「もちろんです。こんなことでグダグダ悩んでいる暇は私にはありません」
その言葉を聞くとさくらは安心して笑みを浮かべると、自分の役割は果たしたとでも言うように反対方向へ歩き出した。