【降谷零・安室透】そばにいさせて《ゼロの執行人編》
第2章 ゼロの執行人
さらにいくつかの事項を確認したあと解散となったものの、さくらだけ降谷に呼び止められた。
「相沢」
「降谷さん?」
風見と二宮の足音が遠ざかったことを確認すると、降谷はさくらに腕を回し抱きつくとその首筋に顔を埋める。
「ふっ、降谷さん!?」
「名前」
「れ、零さん?」
「充電…犯人が捕まるまで息つく暇もないだろうから」
「ん、よしよし」
普段からトリプルフェイスを使い分け、公私混同しない降谷の行動にさくらは固まったものの、甘えるような仕草が可愛くてくすくすと笑い声を漏らしながらふわふわの色素が薄い髪を撫でる。
「よし」
1分ほどそうしていただろうか、降谷は顔を上げると笑みをこぼしてさくらの頭をわしゃわしゃと撫でた。その笑みは安室透の張り付けたようなものではなく、勝気で自信家の降谷零のものだった。
「私も充電できたよ、ありがとう」
「ああ、さぁ、行くか」
ドアノブに手をかけた降谷の表情は獲物を狩る肉食獣のようで、もう『ゼロ』としての降谷の表情になっていた。
さくらはぐちゃぐちゃになった髪を手ぐしで整え、降谷に着いて部屋の外へ出た。