【降谷零・安室透】そばにいさせて《ゼロの執行人編》
第2章 ゼロの執行人
顔を上げて3人を見つめる降谷の眼差しは真剣そのもので、何としてでも犯人を捕まえるという意思が込められていた。
この会議は公式であり非公式だ。内容は警視庁の公安にのみ伝えられて遂行される。メモを取ることも許されないため、頭に叩きこむしかない。
「いまの捜査の段階では爆発物が見つかっていない。このままでは事故で処理される……そうさせないためにも事件化することにした。犯人は……元警察官でもある毛利小五郎探偵を仕立てあげる」
「ッ!」
さくらは思わず喉がヒュッと鳴るのを感じた。すでに目を着けている犯罪者ではなく、何の罪もないしかも知り合いを犯人に仕立て上げる。降谷の考えは分からないが言うことは絶対だ。何か考えがあるに違いないと思いつつ、自分のノートパソコンを開く手は震えている。
「指紋は安室透としていくらでも手に入れることができる。風見はこれを使って公安鑑識に高圧ケーブルの扉に偽造をしてもらってくれ。その後、高圧ケーブルに不具合が見つかったと捜査会議で発表するんだ」
降谷はビニール袋に入った皿を風見の目の前に置く。風見はいつもの無表情で相沢にはそこから感情を読み取ることはできない。
「分かりました」
「二宮は偽の捜査資料を作成して風見とともに会議に参加だ。捜査一課は毛利小五郎と懇意にしている。噛み付いてくることが想定される……刑事部を黙らせろ」
「了解しました」
「相沢は国際会議場の図面やサミットのタイムテーブルを毛利小五郎探偵のパソコンに入れて証拠を残せ。同時に国際会議場のガス栓のアクセス履歴を追って真犯人を突き止めてくれ」
悩んでいる暇はない。そうこうしているうちに真犯人は次のテロを起こすかもしれない。実際に公安の仲間達が何人も亡くなり、命が助かっても社会復帰できないほどの大怪我を負ったものもいる。犯人を早く突き止めねば。さくらは強い意志を持って降谷を見ると頷いた。
「分かりました」
目の前の降谷を信じなくて誰を信じると言うのだ。自分は相手の補佐役で、表立って動けない降谷のために手足となる必要がある。