【降谷零・安室透】そばにいさせて《ゼロの執行人編》
第2章 ゼロの執行人
降谷はさくらたちとは別行動をとっており、ちょうど建物の反対側でチェックを行っている。相沢が降谷に電話をかけるとワンコールもせずに相手が出る。
『降谷だ』
「降谷さん、資料のC32ページを見てください。ガス栓がインターネット開閉できるようになってます」
『なんだと』
降谷はさくらから指定されたページを開くと図面を確認する。確かにそこにはインターネットでガス栓が開閉できることが記されていて眉を寄せる。
ガス漏れだけでは警報器が正常に作動していれば大事にいたる確率は低い。ただし、そこに発火物がなければの話だ。いつ誰が悪意を持ってそこに発火物を仕込むか分からない。自分たちは公安はありとあらゆる可能性をすべて潰さなければいけなかった。
「火元はさすがにインターネットから操作はできないようですが、ガスを充満させれば小型の爆弾でも引火して大規模な爆発が起こる可能性があります」
『わかった、公安鑑識に指示を出す』
降谷との通信を切った直後のことだ。
ドオオオオオオン!!という轟音とともに爆風が起きて受け身も取れないうちにさくらは数メートル吹っ飛ばされる。二宮は咄嗟に姿勢を低くし、爆風を受けたものの飛ばされずにすんだ。
「相沢さんっ!」
二宮の焦った声が聞こえるが爆煙で姿が見えない。建物が燃えているのも視界の端に映り、さくらは急いで立ち上がり叫ぶ。道路に全身を打ちつけたものの、幸いにも足を捻っていないようですぐに立ち上がることができた。
顔や腕など晒されている部分に傷を負ってヒリヒリと痛むがそんなものに構っている余裕はない。
「大丈夫!動けるから!退避!!」
「了解!!」
二宮の返事を聞き、建物から離れるべく一気に走り出す。国際会議場が激しく燃え、後ろから迫るチリチリとした熱を感じてさくらは表情を歪めた。
あの中では、公安の仲間がチェックを行っていた……
一方、降谷も炎に包まれる国際会議場を見上げている。燃えさかる炎に思わず舌打ちが漏れ、崩れ落ちる鉄骨から逃れようと走り出した。