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【黒執事】スノードロップ【死神・裏】

第10章 哀色からの脱却


私は鎖から解放され、ベッドに仰向けに寝かされていた。
その私を覆うように、ウィリアムもベッドの上に乗っていた。

「繰り返しになりますが、貴方はどこから来たのですか」
「……私は、12年前の世界から来ました」

ウィリアムは少し首を傾げた。

「それは、時空を超えたということでしょうか」
「……多分、そうです」
「多分とは、随分曖昧ですね?」
「自分でも、よくわからないんです……夢を見ていたと思ったら、この世界に……」
「そこでロナルド・ノックスと出会ったという訳ですか」
「……はい」

そしてウィリアムは、私の顔に優しく触れた。

「これで一つ、答えられましたね。ご褒美です。何がお望みですか」
「……さっきの」
「はい」
「……さっきみたいな……、キスを、して……」

私はウィリアムの頭に手を伸ばしていた。
ウィリアムは顔色一つ変えることはないが、どこか上機嫌そうだった。

「貴方にとっての“性行為”を、こう何度も私と繰り返して良いのですか?」
「……それは、本当は違うんですよね……?」
「ええ。キスなど、そこへ向かうまでの通過点でしかありません」

伸ばした手で、ウィリアムの頭を自分の方へ引き寄せた。

「……なら、問題ない……じゃないですか」
「そうですね」

ウィリアムはそのまま私にキスをした。
まるで私を、犯すように。
先程と違って、私はウィリアムを受け入れていた。
言い表せない快感が、私を襲った。
しかし数秒程で、唇が離された。

「……なん、で……?」
「言ったでしょう。これは一つ答えたことへのご褒美なのです」

ウィリアムの言葉は、相変わらず冷たかった。

「もっと触れて欲しいですか」
「……はい」
「では、私の言うことを聞けますね?」
「…………はい」

ウィリアムは、後もう少しでキスが出来そうなくらいにまで顔を近付けて言った。

「貴方は何故、時空を超えることが出来たのでしょう?」
「……わかりません」
「本当ですか?」

少し考えて、答えた。

「……私は、この世界に来る前に、酷い目に……」

言葉にしようとして、自然と涙が溢れた。

「クロエさん。落ち着いて下さい。私がついています」

--大丈夫。俺がいるから。

記憶を無くしていたときの私に、出逢ったばかりのロナルドが掛けてくれた言葉が聞こえた気がした。
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