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【黒執事】スノードロップ【死神・裏】

第10章 哀色からの脱却


溢れる涙を呑み込みながら、私はウィリアムに自分の生い立ちを打ち明けた。
その間も、彼は表情一つ変えずに聞いていた。

「そういうことでしたか。……ようやく関連性が見えてきました」
「……関、連性……?」
「いえ、こちらの話です」

仰向けになったまま涙を流し続けた私は、自分の涙に溺れそうになっていた。
そんなとき、ウィリアムが突然私の首元に舌を這わせた。

「ひぁッ!」

体の感度が上がっている状態でのそれは、全身を跳ね上がらせる程だった。

「首は弱いようですね。それならこちらはどうでしょうか」

彼はそう言い、今度は私の耳を軽く噛んだ。

「っんー!」

私は悶えた。
舌と歯を器用に使い、耳を執拗に攻められる。
声にならない声を何度も上げた。

「どんな感覚ですか?」

ウィリアムが意地悪そうに訪ねてくる。

「……っ、くすぐったい……」
「それはきっと」

私の耳元にあった顔を上げ、私を見降ろして言った。

「性的な快感です」

彼はそのまま私が着ているブラウスのボタンに手を掛けた。
最後の一つまで外し、巧みに脱がせていく。
肌着姿になった私は、恥ずかしさよりも期待に近いものに胸を膨らませていた。

「これで、暑いのも少しは軽減されましたか」
「……まだ、暑いです」

ウィリアムは再び、私の耳元に近付いて言った。

「もう少し、貴方を知る必要があります」
「……何ですか」
「貴方がこの1ヶ月で、見た事・知った事を教えて頂きたいのです」
「どのような事を……?」
「何でも良いですが、出来るだけ貴方の印象に強く残っている出来事が望ましいですね」

ロナルドと出逢ったときの事、優しいポリッジの味、初めて行った社交界、グレルとマダムとの遭遇、パブで飲んだシャンパンの香り、そして、ロナルドとした初めてのキス。
思い出すのは、どれもロナルドと経験した出来事ばかりだった。
だが、私の頭の奥から這い出るように、一つの記憶が思い出された。

「私が……いなかった」
「貴方がいない、とは、どういう意味ですか?」
「……この世界に、いるはずの、幼い私が……私の存在が……」

ただ寝転がっているはずなのに、目が回っているような感覚が襲って来た。
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