第6章 真実への扉
席を立って気付いた。結構酔いが回っている。
ロナルドは、量としては私より飲んでいたはずだが、平気そうだ。
死神は酒に酔うこともないのだろうか。
そんなことを思いながらパブの外へ出た所で、ロナルドの元に一羽の鳩が飛んできた。
「うーわ、マジか」
そう言いながら、鳩の脚に巻き付いていた紙を取って開いた。
「げッ、管理課からかよ」
書かれた内容を読み終えたロナルドは、大きな溜息を一つついた。
「クロエごめん、今日は寮に帰れそうにないわ」
「お仕事?」
「そうなんだけどさ、無茶振りし過ぎだっつーの。深夜に一本デカいやつ。こういう急な要請はマジ勘弁して欲しいよ」
ロナルドは一瞬うなだれたが、諦めたかのように前を向いた。
「とりあえず、宿を探そう」
泊まれそうな所を何軒か回ったが、どこも満室だった。
「こういうときに限って空いてないとか……マジあり得ねぇ」
ようやく一軒見つかったようだが、様子が変だった。
「クロエ、あのさ」
「どうしたの?」
「……一部屋しか空いてないらしいんだけど」
もうこの辺りでは他に見つかりそうもなかった。
ここを逃してはロナルドも休む場を失ってしまうだろう。
「クロエが寝るのに使って。朝になったら迎えに来るからさ」
「そんな、ロナルドは?」
「回収終わったら、その辺で適当にね」
「そんなのダメ!」
酒のせいか、感情が大きく表に出てしまった。
「お仕事終わったらすぐに戻って来て」
「でも」
「いいから。約束!」
一方的に押し付ける形になってしまったが、彼を待つことになった。
部屋に入り、コートと手袋を脱いで、背中からベッドに倒れるように寝転がった。
まだ少し酔いが残る頭で今日これからのことを考えてみたが、私はとんでもない提案をしてしまったのだと、この時点で気が付いた。
「……ベッド一つしかない。……ソファもない。ってことは」
全身の血液が顔と頭に上がってくるような感じがした。
こうしてはいられない。
まず、シャワーを浴びたかった。彼がいる前で服を脱ぐなんて出来ない。
何時に戻って来るのかわからない為、急ぐ必要があった。
終わる時間くらい聞いとけば良かったと後悔した。