• テキストサイズ

【黒執事】スノードロップ【死神・裏】

第5章 真実への道


列車を降り外へ出た頃には、もう辺りはすっかり暗くなっていた。
私の隣で、ロナルドは大きく伸びをした。

「さて、少し歩くか」

その道は都会に比べると静かだが、人もそこそこいるので寂しい感じはなかった。
なんとなく見覚えのある光景が、所々に存在した。
進むにつれて、懐かしいと感じるようにもなった。

「もうすぐじゃないかな、クロエのお家」
「うん。多分、あれ」

私が指差した先に、ひとつの一軒家があった。
なんだか胸が苦しくなってきてしまった。

「クロエ。大丈夫だよ。お前は一人じゃない」

私の様子に気付いたロナルドが、優しく肩を抱いてくれた。
彼の存在を感じると、不思議と落ち着いてくるのだった。

「このくらいの時間だと、家族はみんな在宅中かな」

その通りだと思った。だが、恐らくまだ“私”はいない。
この頃、少し距離のあるスクールに通っていた私は、他の家族よりも帰宅が遅かったのだ。
それが、家族を殺した犯人の手から私だけが逃れた理由でもあった。

家の様子を離れた所から伺っていると、反対側から10歳前後の少女が歩いてくるのが見えた。
二人で目を凝らして、その少女の行動を観察する。
少女は、“私”の家へ入って行った。

「……え」

私は声を漏らした。何故ならその少女というのは、“私”でもなければ、妹でも、従姉妹でもなかったのだ。

「誰だろう、今の女の子」
「クロエではなかったね」
「うん……」

先程の、バタフライ・エフェクトの話を思い出した。
あの少女は、この時代の“私”しか知らない友人なのかもしれない。
それにしては、そこが自宅かのように入って行った。
頭が混乱した。

「どうする? もう少し調べてみる?」

悩みどころだった。これ以上の調査とは、この時代の家族とやはり接触を持たなければならないかもしれない。
そして、その先の真実は、知らない方が良い事な気がしてならなかった。

「ここまで来れば、そんなに急ぐことないし、ちょっと休もっか」

ロナルドはまた私に、気を遣ってくれていた。
/ 80ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp