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【黒執事】スノードロップ【死神・裏】

第5章 真実への道


ターミナルに着き、列車に乗る所まで来て私は驚いた。

「こ、ここって」
「どうかした?」
「この席って……」

私が乗車しようとしているそこは、一等客車だったのだ。
ロナルドを見ると、彼は私にウインクを一つ落とし、席へとエスコートしてくれた。
ソファに向かい合って座る。

「驚いた?」
「それはもう、びっくり」

ロナルドは被っていた帽子を脱ぎ、自分の横へと置いた。

「一等は初めて?」
「もちろん」
「クロエの初めて、ひとつもーらい」
「もっと、偉い人しか座れないと思ってたから」
「俺が何者か忘れた?」
「……死神様」
「正解」

列車が動き出し、窓の外の景色がゆっくりと流れていく。

「私なんかが、こんなに贅沢な思いして良いのかな」
「クロエ」

ロナルドの優しい声が、私を呼んだ。

「今日は、デートだろ?」
「な……!」
「もちろん遊びに行くってわけじゃないけど、折角こうして二人で長くいられるんだからさ」
「それが、デート……?」
「そう。だから少しでも、クロエには良い思いしてもらいたいじゃん?」

そう言う彼の表情は、とても穏やかだった。

列車の音だけが響く中、私は気になっていたことを口にした。

「この前会った、赤い死神の……」
「サトクリフ先輩?」
「そう。あの人、ローズ伯母さんのこと、知らないって言ってたよね」
「そうだな」
「本当かな」
「本当だと思うよ。そういうつまらない嘘を吐くような人じゃないからね」

私は窓の外を見た。
相変わらず、景色が流れていっているだけだった。

「何か、違うのかな」
「ん?」
「こう、上手く言えないけど、この私が過ごした日々と、少し違うことが起きてるのかなって思って」

視線を窓の外から車内へ戻した。

「バタフライ・エフェクト」
「え?」
「ほんの少しの違いが、その後の結果に大きな影響を与える、的な理論だね」
「……私が時空を超えてしまったせいで、色んなことが変わってしまったとか」
「それも少なからず影響しているとは思うけど、なんとなく俺は、もっと違う要因があるんじゃないかって気がしてる」
「違う要因?」
「まぁ、勘だよ。とにかく、これから行く先で何かしらわかってくると思うからさ。それまでは考え過ぎずに、少しでも楽しいことしよ」
「……うん」
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