第4章 遭遇
「おーっと、それ以上来ないでもらえます? うちの猫は臆病なんで。俺にしか懐かないんスよ」
「あらそうなの? ふーん……アンタも色々と引きずっているみたいネ」
「先輩にだけは言われたくないな」
赤い死神が突如デスサイズを振り下ろした。
私の前へ回り込んだロナルドが、デスサイズで応戦した。
二本のデスサイズのぶつかり合う音が響き渡る。
「アンタの目的は何? まさか、派遣協会からの正式な指示じゃないでしょう?」
「さあね」
デスサイズ同士が離れ、その隙にロナルドは、私を抱えて赤い死神との距離をあけた。
「その子猫が絡んでるわネ」
「だったらなんです?」
「“要らない”とは言ったけど、アンタをその気にさせた理由くらいは知りたいと思っただけよ」
赤い死神が再びこちらとの距離を縮める。
彼の狙いは、私のようだ。
またしてもロナルドがデスサイズで迎え撃つ形となった。
私の目の前で、激戦が繰り広げられる。
「この子は関係ないだろ」
「さぁ、それはどうかしら」
離れたと思っても、すぐにデスサイズの音が響く。
「アタシ、今、人間の儚い命と、それを躊躇いなく壊す人間のコントラストに惹かれてるの」
「へぇ。随分と悪趣味っスね」
「そう? コントラストは大きければ大きいほど魅力的なのよ。例えば、一方は鋭い刃(やいば)を持った獣で、もう一方は、懸命に命を守られる子猫、とかネ」
ロナルドの顔が青ざめた。
私はマダム・レッドの囚われの身になっていた。
首元にメスをあてがわれている。
「クロエを離せ!!」
ロナルドは赤い死神の元からこちらへ向かって降りてきた。
デスサイズをマダム・レッドに振り下ろしそうになった所を、今度は赤い死神に抑えられてしまう。
「聞きなさいって。アタシ達はアンタの目的が聞きたいだけ」
「クロエの解放が先だ」
「はぁ。ちょっとアンタ、その子猫を放してやんなさい」
「グレル、良いの?」
「別に、その子猫殺したってアタシ達には何の得もないじゃない。さっきのはロナルドに鎌をかけただけよ」
赤い死神、グレルの言葉で私はマダム・レッドの手から解放された。
死神同士の戦闘も、一時休戦となったようだ。