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Little lieR【イケヴァン◆ifイベ原作】

第3章 哀しみのオルゴール


「レフィリア、時計は元通りになったが」

控えめにノックするけれど、返答はなく。

「レフィリア………?」

不審が胸の中を塗りつぶしていく。

迷った末に、『入るぞ』と声を掛けてドアノブを回す。


そこには誰もいなくて。


デスクにある羊皮紙に、伝言をしたためようとペンを取った時。

美しい細工のオルゴールが置かれていることを見止めて。



触れてはいけない。彼女のものなのだから。


そう思いつつも、レオの手はオルゴールに伸びていた。

「セバスチャン、そこにいるの………?」

彼女が部屋へと戻ってくる。

レフィリアは己の手の中にあるオルゴールを見止めると、顔色を変えた。


「………それに触らないで」

すぐさま奪い返すように取り上げると、デスクの上に置き直した。

「っ………ごめんな、レフィリア」

「いいの、私も言い過ぎたから。

これは………大おじ様が私の誕生日に特別に造らせたものなの」

そっと蓋を開けると、甘く優しい旋律が奏でられる。

「大おじ様も、おばあ様もお母様だって、みんな私を置いて………」


彼女の声がすこしばかり、揺らめいた。

………泣くまいとしているのだろうか。


「ぁ………ごめんなさい。こんな話を、あなたにして」

思わず儚い身体を抱きしめた。

ぎゅっと、痛いくらいに包み込む。




「あんたの哀しみを分かちたいって願っているのは、なんでだろうな………」

「え………?」

見上げた瞳は、優しい手つきで覆い隠した。

「あんたの思い出は、俺が直してやるから。

だから………そんな顔するな」

その耳元で囁いて。

「っ………ねぇ、あなたはどうしてそこまでしてくれるの?」

「そんなの………決まってるだろう」


『あんたが好きだから』―――その言葉を、喉の奥で封じた。

他の男達も彼女に惹かれている。選ぶべきは………彼女だ。



「なに………?」

「何でもねえ。

………とにかく、壊れた品があれば俺のところに持ってこいよ」

それだけを告げ、つま先を廊下へと目指した。




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