第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
「 ただいま──っ 」
家に帰るとリビングから楽しそうな声がした
みんなもう帰宅してるのかなんて思いながら
私達もリビングに向かって廊下を歩いて行く
音を立てぬ様にリビングの扉を開けてみると
ダイニングテーブルに何やら群がっている
これはどうやら黒尾さんと陽葵ちゃん2人の
ウェディングモデルの写真を見ている様子だ
「 みんなで何見てんの──? 」
菅原くんの声に数人がこちらへと振り返る
振り返ったその中の1人である木兎くんが
私を見た瞬間に雄叫びに近い声をあげ始める
「 うおぉおお──?!美雨か?! 」
「 はい … 叫び過ぎですよ … 」
木兎くんの叫び声に全員がこちらに振り返る
全員が同じ様に口をポカーンと開いた状態だ
「 ジャジャ──ン!
俺の店のカットモデルやってもらったんだ
どう?どう?美雨ちゃん可愛いでしょ?! 」
「 これは見違えましたね 」
「 茶髪も似合ってんな 」
「 この及川さんと髪色お揃いになったね 」
「 女の子はこんなに変わるもんなんだな! 」
「 えらい可愛くなってるやん 」
みんなが口々に私の変わり様を褒めてくれた
少し嬉しくて思わず口元が緩んでしまう
菅原くんもドヤ顔をしながら笑っている
みんなが私のイメチェンに驚いている中
謝らせたい男 黒尾鉄朗は私を見つめたまま
黙って会話に入ってこようとすらしなかった
私の変身に驚いたか!としてやったりな顔で
黒尾さんを見つめたが何故か反応はなかった
「 美雨ちゃん、本当に似合ってるよ! 」
「 ありがとう、陽葵ちゃん 」
「 あ!そうだ美雨ちゃんもこれ見て見て! 」
陽葵ちゃんが差し出したのは数枚の写真
そこには幸せそうな顔をして笑っている彼女
そして凛々しい顔をした黒尾さんが写ってて
モデルの仕事だとは分かってはいるが2人が
まるで結ばれたみたいでほっこりしてしまう