第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
「 ただいま── 」
「 おかえりなさい。
これ黒尾さんの分の洗濯済みの服です 」
彼の洗濯済みの服を直接 彼に手渡した後
私は何事もなかったかの様にキッチンに戻る
黒尾さんとは必要最低限の会話だけで良いの
そしたら自然と陽葵ちゃんと話すだろうしね
ご飯の時間になると自然と全員が降りて来る
すると黒尾さんの声が私の背後から聞こえた
「 なぁ これお前のパンツだろ?
俺の服の中に紛れてたんですけどお? 」
振り返ると私のパンツが目の前に広げてあり
黒尾さんのニヤニヤ顔がその隙間から見えた
勢いよく黒尾さんからパンツを取り上げた
「 お前 下着だけは色っぽいんだよなァ 」
「 うるさいですよ … 」
「 そりゃそうだよ!俺の趣味なんだから! 」
及川さんは凄く嬉しそうにドヤ顔している
黒尾さんもニヤニヤしながら見ていて不快だ
大体何でみんなが居る前で言うのだろうか?
やっぱり彼にはデリカシーが無いと言うか …
「 まぁ下着だけセクシーでも微妙かァ 」
「 変な髪型の人に言われたく無い … 」
「 あ?!おチビ お前は俺に何言った? 」
「 髪型が変な … んむぅ はなひて … 」
彼は私の口を強く摘んだまま離してくれない
嗚呼 今私の顔は凄く不細工なんだろうなあ …
黒尾さんは私の顔を見ながら笑っているし
「 2人って仲良いんだね! 」
みんなが苦笑いしていると及川さんが言った
私達が仲良い?!そんな風に見える筈がない
むしろ仲悪いようにしか見えないと思うけど
黒尾さんはようやく私の口元から手を離した
「「 仲良くなんてないです / ねぇし 」」
思わず声が揃ってしまったが初めて意見合致
「 喧嘩するほど仲が良いって言うしな 」
岩泉くんも及川さんの言葉に賛同したようだ
陽葵ちゃんを応援したいと思っているのに
どうしてこんな事になってしまうのだろう?
仲が良いなんて本当に誤解でしかないのに