第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
店員さんは下着をどんどん袋に詰めていき
あっと言う間に会計が済み買い物は終了した
こんなに大量の下着を買い与えられた所で
私が全部着れる訳ないのにと溜息を吐いた
「 買いすぎじゃないですか?!
確かにロクな下着は持っていませんが …
こんなにあっても使いきれないですし
そもそも仕事に必要だとは思えません! 」
「 だから必要なんだってば
そのうちこの言葉の意味が分かるから!
さて買い物も済んだし仕事に行くよ! 」
及川さんの理解不能な行動に困惑しながら
言われるがまま私達は再び車に乗り込んだ
ランジェリーショップから更に15分走る
街中から閑静な住宅街へと景色が変わった
車はとある家の前に静かに停車した
扉を開けると私は目の前の光景に目を疑った
宮殿の様な作りの豪邸が立ちはだかっている
及川さんは確かにお金持ちなんだろうけれど
私が思っているより大物なのかもしれない …
「 曽祖父が俺に遺してくれた家なんだ 」
「 及川さん家はお金持ちなんですね 」
「 まあね
うちの家系は努力家が多いみたいでね
父親は開業医で母親は大学で教授してる 」
元々がお金持ちって訳ではないんだ
人より何倍も努力して勝ち得た地位なのか
なんだかいやらしさのないお金持ちである
大きな扉を開けると広い玄関が広がった
普通に部屋と同じくらいの広さで驚いた
巨大なシューズインクローゼットには
何足でも靴が収納出来てしまいそうである
「 徹くん、おかえりなさい 」
玄関に見とれていると正面から女性の声
視線を向けるとメイド服を身に纏っている
可愛らしい女性が笑顔を向けて立っていた