第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
及川さんと約束した日は早起きをして
朝から気合い入れてシャワーを浴びていた
高級シャンプーを使い髪の毛を丁寧に洗うと
嗅いだことがないような良い香りに包まれた
化粧品は持ってはいるが殆どしない
やり方がいまいち良く分からないからである
ある知識だけでどうにかメイクを施してみた
服は持っていたもので1番マシなのを選んだ
── 女子力なんて早々に上がるものじゃない
鏡に映る自分の姿を見つめながら溜息を吐く
そろそろ及川さんが迎えに来る時間だろう
私は荷物をまとめてフロントへと向かった
「 美雨ちゃん、おはよう!
この2日間はゆっくり休めたかな? 」
「 及川さん、おはようございます。
お陰様でゆっくり休むことが出来ました!
不束者ですが今日から宜しくお願いします 」
チェックアウトを済ませるとホテルを出た
及川さんは今日は車でやって来たそうだ
彼の車に乗り込み職場へと向かって行く
私はどんなお家で働くのだろうか、楽しみだ
車が走り始めてからおおよそ15分
まだ街中を走っていた車はある場所に停車
「 仕事で必要な物を買わないとねえ 」
着いた場所は実に驚くべき場所であった
及川さんは躊躇する事なく中へ入って行く
どうしてこんな所へやって来たのだろう?
及川さんが私を連れて来た場所はなんと
有名なランジェリーショップであった
仕事で必要って下着なんて必要ないよね?!
だって私がする仕事って家事手伝いだよね?
「 ちょっ … 及川さん?!どうして … 」
「 美雨ちゃんってBカップくらいでしょ? 」
「 えっと、そうですけど … じゃなくて! 」
「 お姉さ──ん!!
この子に合うサイズの下着持ってきて?
上下セットで全部買うので包んで下さい 」
上下セットで全種類買うつもりなの?!
私は店員さんに無理矢理サイズを測られ
されるがまま状態で呆然と立ち尽くした