第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
翌朝 赤葦くんは至って普通にしていたので
私も何もなかったかのように振舞っていた
「 美雨 、えらいゲッソリしてんな 」
「 久しぶりに運動したので …
全身が筋肉痛で体が異常に重たいんです 」
「 3日坊主になるんちゃうん? 」
「 そうならない様に頑張りたいと思います 」
侑くんは私を見ながらヘラヘラ笑っている
こんなにキツイならすぐにやめてしまいたい
そんな時はあの人を見てやる気を出すしか …
私は黒尾さんの方へとチラリと目をやった
彼はどうやら気付いてはいないようだった
「 そう言えば鉄くんにお願いがあるの 」
陽葵ちゃんが恥ずかしそうに頬を赤らめな
黒尾さんを見ながらおずおずと切り出した
「 何、お願いって 」
「 来月なんだけど知り合いから
ブライダルモデルやってほしいって頼まれて
OKしたんだけど相手の新郎役の人がその日
都合つかなくなって代役を探してるんだよね
長身で黒髪が条件だからなかなか居なくて
新郎役のモデル鉄くんにお願いしたいんだ 」
「 黒尾がモデルだとお──?!
それなら絶対に俺の方が良いってば! 」
「 木兎さんは黒髪じゃないですよね 」
「 モデルと言えばやっぱり俺だよね! 」
「 クソカワ お前も黒髪じゃねぇだろうが 」
黒尾さんがモデルだなんて少し笑えてくる
みんなが騒いでいる中でニヤニヤしている私
そんな私を見つけると黒尾さんは睨んでいた
「 俺は別にいいけどさ
澤村とかの方が爽やかで良いんじゃね?
黒髪だし身長も俺より低いけど高いんだし 」
「 お前より低くて悪かったな 」
「 黒尾さんって鈍感ですよねェ 」
「 空気読みましょうよ、黒尾さん 」
月島くんと赤葦くんはからかうように言った
陽葵ちゃんが彼の事が好きだと知っていて
黒尾さんをあえて誘っている事も分かってる
当の本人は全く気付いていないみたいだ …