第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
少しずつ動いてみようと体をずらしてみる
寝ている人の体はなぜこんなに重たいのか
彼の体はビクともせずに私は項垂れていた
「 どこ行こうとしてんの? 」
突然声がして私は赤葦くんの顔を見つめる
寝ぼけていると思っていたけれど確信犯か?
「 え … いや … なぜここに居るんですか? 」
「 脱衣所で美雨が寝てたから
部屋まで運んでそのまま寝ちゃったみたい 」
あの時に座り込んだまま寝ちゃったんだ
それを赤葦くんがわざわざ運んでくれたのか
なんだ赤葦くんって結構優しい所もあるんだ
頭の中で物思いにそんな事をただ考えていた
── あれ?じゃあ彼が上半身裸の理由は?!
「 あの …
どうして服を着ていないんですか? 」
「 美雨はどうしてだと思う? 」
赤葦くんは意味深な笑みをうっすら浮かべ
私の唇を自分の指でゆっくりなぞっていく
やっぱりまた寝ている隙にヤっちゃったの?
思い出そうとしても記憶に無く覚えていない
「 分かりません … 」
「 大丈夫だよ、安心して
俺たちはまだ一線は超えたりしてないよ
黒尾さんみたいに寝てる隙に襲ったりしない
俺はそんな悪趣味なことなんてしないから 」
確かにそう言われてみればそうだよね
あの人みたいに悪趣味な事なんてしないか …
みんながみんなあんな風なんかじゃないよ
「 そ、そうですよね!
なんだ──っ!何もしてないなら良かった 」
「 勘違いしてる?
まだ何もしてないとは言ったけど
これから何もしないとは言ってないよ 」
「 へ?! 」
「 この前言わなかったっけ?
今度美雨とするの楽しみにしてるねって
今日は疲れてるみたいだからしないけど 」
思い出してみると確かに言われた気がする
あの時は彼にからかわれてると思っていた
だから本気にはしていなかったから驚いた
「 朝までここで寝かせて?
自分の部屋にわざわざ帰るの怠いし
俺にだって人肌恋しい時もあるからさ 」
人肌恋しいとかそんな事を思う人なんだ
赤葦くんって凄くクールな印象があるからか
なんだか意外な言葉でもあるような気がした
流し目でチラリと私の方を見つめる目元は
どことなくセクシーで思わず見惚れそうだ
住人が望む事を拒めないルールがあるから
NOとは言える筈もないので黙って頷いた