第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
木兎くんに何回抜かされたか分からない
私は自分のペースでひたすら走る事に専念
途中で歩いてしまいそうになりながらも
その度に黒尾さんの姿を頭に浮かべながら
自分を奮起させながら走る足は止めなかった
5週走り終えると彼は芝生に座り込んで
ストレッチをしながら私の事を待っていた
「 ハァハァ … お待たせ … っ 」
「 お疲れ!頑張ったじゃん! 」
「 もうっ … 疲れて足が動きそうにない … 」
疲れて項垂れて居ると木兎くんは私の前で
しゃがみながら振り返るとニカッと笑った
「 おんぶしてやるから乗れ! 」
「 え … ?!いいよ そんな … 重いし
少し休んで帰るから先に帰っていいよ! 」
「 一緒に来た意味無くなんじゃん!
ほら!早く帰ってさっさと風呂入ろうぜ! 」
早く早くと促され渋々彼におんぶしてもらう
男の人におんぶなんてされた事なんかないよ
子供になったみたいで周りの視線が気になる
恥ずかしくて木兎くんの肩に顔を埋めていた
「 全然重くねぇじゃん! 」
「 木兎くんは力持ちなんだね 」
「 プロのバレーボール選手だからな!
普段トレーニングは欠かさずやってるし
今度美雨も俺の試合見に来たらいいじゃん! 」
「 うん!私も見てみたいな 」
バレーボールのルールはよく知らないけれど
彼がバレーボールをしている姿は見てみたい
きっと迫力があってかっこいいんだろうな …
大きな背中を見つめながらそんな事を思った
世間話をしながらあっという間に家に着いた