第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
「 はい、これ俺の連絡先だよ
とりあえず部屋の準備なんかもあるから
申し訳無いけど2日間は時間を貰うからね?
その間は俺がホテルをとってあげるからさ
ホテルでゆっくり体を休めてていいからね 」
彼は優しく微笑みながら名刺を差し出した
私が名刺を眺めている間 彼は電話をし始めた
── SJ. GROUP 代表取締役 / 及川徹
及川徹さん、名が体を表しているようだ
やっぱり彼は社長さんだったんだなあ …
どうりで身に付けている物が高価そうな訳だ
この見た目で社長ならモテるんだろうなあ
「 やっぱり社長さんだったんですか
さっきの聞き間違いじゃなかったんですね 」
「 この店は俺の会社が経営してるんだ
さてと、話もまとまった事だし出ようか?
さっき電話したらホテルも予約取れたから 」
私達はお店を後にし及川さんに連れられて
予約してもらったホテルへと歩いて向かった
ホテルまで用意して貰えるなんて有り難い
今ならネットカフェでも全然嬉しいくらいだ
ホテルは普通のホテルだとばかり思っていた
だが連れて来られたのは高級ホテルの前だ
やっぱり社長だからお金持ちなんだろうなあ
「 チェックイン終わったよん
食事はルームサービスを使ったら良いよ
支払いは全部こっちに来るようにしたから
じゃあ、明後日の10時に迎えに来るね! 」
「 あのっ!本当にありがとうございます 」
深々と頭を下げお礼を言うと及川さんは
ヘラヘラしながら手を振って去って行った
部屋に入ると1人にしては広すぎて驚いた
久しぶりのベッドへと勢い良くダイブして
ふわふわの布団の感触を堪能し幸せに浸る
明後日から始まる仕事は頑張らないとね
またクビにならないようにしなきゃ …
久しぶりの布団の感触に安心したのか
私はそのままお風呂も入らずに寝落ちした