第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
PM 21:00
私はシャワーを済ませパジャマに着替えた
実は外で着るものも家の中で着るものも
初めて家に来た時から全て揃えられていた
恐らく及川さんの趣味で集めたのだと思う
女の子らしい可愛いデザインのものが多くて
なれない私はそれを着るのが少し恥ずかしい
パジャマも某有名ブランドのモコモコのやつ
手触りが気持ちよくてそれにすごく暖かい
前髪は同じ素材のダーバンで綺麗にあげた
及川さんの部屋に向かう前に行く所があった
冷蔵庫の中からケーキが入った箱を取り出し
紅茶をこしらえて月島くんの部屋へと向かう
── コンコンッ
きっと彼はまた怠そうな顔をするんだろうな
そんな事を考えながら扉の前で待っていると
案の定私の顔を確認するなり深い溜息を吐く
「 何 」
「 あのっ … この間のお礼にと思って
ケーキを買って来たので良かったらどうぞ 」
「 何個入ってんの? 」
「 2個入っています … 」
月島くんは一瞬面食らった様な顔をした
ケーキの箱と紅茶を無言で受け取った後
月島くんはは私に意外な言葉を言い放った
「 入れば? 」
「 えっ … 良いんですか? 」
「 良くなかったらわざわざ言わないデショ 」
そう言うと部屋の中へ入って行ったので
私も彼の後を追う様にして部屋の中へ入る
彼の部屋も黒尾さんの部屋同様シンプルで
デスクにはパソコンが2台も置いてあった
月島くんは床に敷いているラグの上に座り
私もその近くに遠慮がちに座らせてもらう
テーブルの上でケーキの入った箱を開けた
すると月島くんは呆れながらまた深い溜息
「 チッ … モンブラン … 」
「 すみません …
ショートケーキがお好きなんですよね
てっきりケーキなら何でもお好きなのかと 」
「 しかも2個ともモンブラン
普通はさ違う種類のケーキ選ぶデショ 」
「 気が利かなくてすみません …
次買う機会があれば絶対気を付けます 」
月島くんは項垂れながらも中に入っていた
プラスチックのフォークを私に差し出した
私は驚いてしまい月島くんを凝視してしまう