第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
及川さんはソファーに座っていたはずなのに
突然身を乗り出しぐいっと顔を私に近づけた
今にもキスしてしまいそうな距離にたじろぐ
── 顔がっ … !ち … 近いっ!恥ずかしい
視線を逸らそうとしたけど身動きが取れない
にしてもやはり及川さんは綺麗な顔をしてる
肌なんてシミひとつ無くて透き通っている
女の子みたいな柔らかそうな唇に長い睫毛
そして仄かに香る香水の香りがいい匂いだ
「 それよりも …
この間は岩ちゃんに邪魔されちゃったし
今日の夜にでもこの間の続きをしようか 」
この間の続きって … 記憶が鮮明に蘇っていく
そう言えば初日の日にここで襲われかけて
間一髪 岩泉くんに助けてもらったんだっけ?
あの時はまだ処女で必死に死守していたけど
誰かさんにあっさり奪われてしまったわけで
「 … 拒否はできませんよね? 」
「 うん、美雨ちゃんに拒否権なんてない
今日の夜 お風呂済ませたら俺の部屋に来て
この間みたく余計な邪魔は入らないからさ 」
笑顔で言っているのに何故か少し怖かった
彼が何かを企んでいる様な気がして勘ぐる
まさか変な事とかしようとしてないかな?
でも黒尾さんじゃあるまいしそんな事ないか
きっと及川さんは優しくしてくれるかもな
「 分かりました … ので
そろそろその綺麗な顔を退けて下さい … 」
「 じゃあ今夜 楽しみにしてるね!」
及川さんは上機嫌になりスキップしながら
リビングルームから去って行ってしまった
今日の夜 私はあの人にどんな風に抱かれる?
あんなイケメンと私は … 想像したら体が熱い
今夜の事は一旦考えるのをやめることにした