第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
「 これどうしたの? 」
冷蔵庫の中に入っていた箱を見つめながら
陽葵ちゃんがキョトンとした表情をしていた
昨日パソコンがフリーズした時に月島くんが
助けてくれたのでそのお礼でもと休憩時間に
慌ててケーキ屋さんに行って買ってきたのだ
お金が無いから2個しか買えなかったけど …
「 休憩時間に買って来ました
昨日の夜パソコンがフリーズしちゃって …
月島くんに助けてもらったのでお礼に。
確か月島くんはケーキが好きでしたよね? 」
「 そうだったんだね
そんなに気は使わなくて良いと思うけど
私達は確かにこの家のメイドではあるけど
そんなに主従関係は無いから大丈夫だよ?
徹くんも敬語使わなくて良いって言ってたし
でも蛍は喜ぶだろうね、ショートケーキ! 」
「 そうなんですか … 」
確かに漫画やアニメで見ていたメイドさんと
ここのメイドは若干異なるように思えてきた
おかえりなさいませ御主人様とか言わないし
みんなの事を名前で呼び敬語も使っていない
家事をしてくれるルームメイトみたいな感じ
ただルールとして「住人の要求は拒めない」
なんて謎なルールだけが存在しているけど
それ以外は本当にただのルームメイトに近い
「 あれ?月島くんって …
ショートケーキが好きなんですか?
ケーキじゃなくてショートケーキ? 」
「 そうだよ
苺のショートケーキが1番好きなんだよ
プロフィールブックにも書いてたでしょ? 」
「 ケーキしか頭に入ってませんでした … 」
「 ありゃりゃ
その反応は違うの買ってきちゃったんだね
大丈夫だよ、気持ちが大切なんだからさ! 」
「 モンブランを選んでしまいました … 」
どうしてモンブランなんて選んでしまった?
せめてショートケーキと近いものだったら
言い訳も出来そうなものだけど程遠すぎる
私って鈍臭いのかもしれないと苦笑いした
陽葵ちゃんは私の事を必死で慰めてくれた