第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
彼がパソコンを触り始めてものの数分で
固まっていた画面はいとも簡単に元に戻った
その早さに驚いて思わず口を開いてしまった
「 月島くん … 凄いねっ! 」
「 あんた馬鹿にしてるデショ 」
「 違うっ!馬鹿にしてないよ!
本当に凄いと思ったからそう言ったんだよ?
なんか月島くんが魔法かけたみたいだった 」
「 馬鹿じゃないの? 」
彼はそう言いながらも耳が赤くなっている
恐らく月島くんは今、照れているのだろう
案外可愛い所もあるじゃんと私は内心思った
やっぱ真っ向コミュニケーション苦手なんだ
「 ツッキー こいつ借りても良い?
それとも今からこいつとお楽しみかァ? 」
開いていた扉の前に黒尾さんが立っていた
どうしてこの人が私の部屋に来るのだろうか
私が黒尾さんを睨んでいると月島くんが言う
「 楽しむ訳ないデショ
僕は黒尾さんと違って幼児趣味ないんで 」
「 幼児?!それって私の事?! 」
「 あんた以外に誰がいんの?
それとも自分の事を大人の女だなんて
とんだ勘違いしてる訳じゃないよねぇ? 」
月島くんはヘラヘラしながら答えた
さっきの褒めた言葉を返して欲しい!
可愛いなんて少しでも思った私が馬鹿だった
それに後悔しながら若干イライラしていると
黒尾さんが早く俺の部屋に来いと私に言った
「 月島くん … ありがとう 」
苛つく気持ちを必死に抑えながら礼儀として
一応礼お礼を伝えて黒尾さんの部屋に向かう
私は黒尾さんに連れられ彼の部屋に入った
今朝はほとんど見ていなかった部屋の中は
彼の部屋とは思えないほど整理整頓され綺麗
「 それで何か御用でしょうか? 」
「 昨日の事 まだ根に持ってんですかァ 」
怒っていると分かっているなら聞くなよ
ヘラヘラしちゃって本当に腹が立つ顔だ
そもそも私に謝る気なんてないくせに!
「 別に … ただし
色気が無いだとか散々私に言っておいて
結局やる事はやるんだなと呆れています」
「 だからタイプじゃねぇからって
セックス出来ない訳じゃねぇからな?
気持ち良い事には変わりねぇんだし 」
── 最低っ!こんな人に処女を奪われたの?
黒尾さんは絶対にヤリチンだと私は確信した
女なら誰でも良いと思っているタイプだろう
せめて黒尾さん以外の人に捧げたかったなあ
