第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
洗濯物との格闘を終えると次は掃除機持ち
リビング全体と部屋の前の埃を吸い取る
そして床を丁寧にせっせと拭き上げていく
この作業が1番地味でしんどいのである
淡々と家事をこなしやっとひと段落ついた
「 そろそろ買い出しに行こっか! 」
陽葵ちゃんが疲れきった私に声を掛けた
買い出しには大きいワゴン車で行くらしい
もちろん運転をするのは私ではなく彼女だ
向かうのは近所にある高級スーパーだそう
「 そう言えばさっきの話の続きで
陽葵ちゃんなら誰が良いと思いますか?
その … もしも彼氏にするんだったら! 」
「 私はね … 秘密にしておこうかな? 」
「 えっ?!秘密にしちゃうんですか! 」
「 うん、そこは敢えて言わない事にする 」
彼女は楽しそうにクスクス笑っていた
秘密にされると逆に知りたくなるけど
もしかしたら私には言いたくないのかも
だからこれ以上は私も突っ込まなかった
スーパーに着くとそれぞれがカートを持ち
陽葵ちゃんが書いた買い物リストを渡された
量が多いので二手に分かれる事になったので
私は1人でカートを押しながら店内を彷徨う
9人も居るのだから日用品の量も本当に多い
すぐにカートがいっぱいいっぱいになった
ティッシュをこんなに買った事なんてないよ
カートに入らず手に持ちながら進んで行くと
陽葵ちゃんが鮮魚コーナーで立ち止まって
真剣な顔をして魚を選んでいるのが目に入る
手に持っているのは秋刀魚のパックの様だ
そういや黒尾さんの好物って秋刀魚だよな
もしかしたら今日の晩ご飯は秋刀魚かな?
にしてもあんな真剣に選ばなくても良いのに
そんな事を思いつつ私はラップを手に取った