第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
「 セックスなんてなんて事ねぇだろ 」
「 … なんて事ないなんて無いですからっ!
私は … 私の初めての相手が貴方なんて!!
最低最悪ですよ!一体どうしてくれるの? 」
私の突然の告白にも一切動じず煙を吐き出す
黒尾さんは人の気持ちとか考えないのかな?
「 だから血が出たのか … 納得
ってか初めてだったからってだから何なの?
いいじゃん何も減るもんじゃねぇんだしさ 」
「 貴方にはそうでも私は違うのっ!
初めてだったのに痛いとか気持ち良いとか
何にも覚えてないし目が覚めたら喪失なんて
しかも相手がデリカシーがない人なんて!
だいたい人の事色気無いって言ってたのに 」
「 色気ねぇからってヤれねぇ訳じゃねぇの 」
普通にごめんとか言えないものなのかな?!
彼の悪びれもしない態度が余計に腹が立った
「 なあ──黒尾っ!
キャリーケース貸してくんねっ?!」
突然 部屋の扉が勢い良く開いたかと思えば
隣の部屋の木兎くんが私達の前に姿を現した
私はまだ裸のままでベッドの上に座っていた
「 ギャヤァ──アァアァ!!! 」
再び私の大きな叫び声が部屋の中に響き渡る
私の顔はきっと凄く赤くなっているだろう
「 お前はノックくらいしろよな 」
「 黒尾は早速美雨に手出したのかよ! 」
「 溜まってたし近くにおチビが居たから 」
黒尾さんはゆっくりベッドから起き上がると
恥ずかしがる事もなく静かに着替え始めた
というか私のメイド服と下着はどこにある?
部屋を見渡すと木兎くんの足元付近にあった
「 ちょっと … 服取ってもらえますか? 」
黒尾さんが拾い上げ私の方へと投げつけた
投げないで手渡ししてくれればいいのにと
また彼に対して怒りが湧き上がってしまう
「 てか2人共まだ寝てたんだな 」
「 え?今何時だよ 」
「 今は7時半だけど? 」
「 ええぇえ──?!寝坊しちゃった!
全部、黒尾さんのせいなんですからね?! 」
「 俺のせいにすんな 」
バタバタと慌ただしく部屋を出て行くと
リビングではもう既にみんな集まっていて
優雅に朝食を食べてながら過ごしていた
「 申し訳ありませんっ! 」
私が頭を下げて謝るとみんなの視線を感じた
初日に寝坊だなんて私の印象最悪だろうな …
及川さんが私の体を心配する様に声をかけた
