第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
何だか体がやけに温かくてすごく心地良い
体が宙を待っている様にふわふわしていて
今まで体感したことがない多幸感を感じた
このままずっとこうしていたいと思った
すると突然体に何かがのしかかっているのか
息苦しくなってきて私は必死にもがいていた
現実に引き戻される様な感覚に陥っていき
自分が眠っていた事を薄い思考の中で悟った
嗚呼、夢だからあんなに心地良かったのか
思い瞼を開けると部屋の天井が目に入った
── あれれ?この部屋は … 重たっ
私の胸辺りにのしかかっていたのは … 腕?!
一体誰の腕だろうと疑問に思いつつ退かした
体を起こすと体全体と頭が軋む様に痛かった
それよりもここは私の部屋ではない … じゃあ
「 ん──っ 」
突然 唸る様な小さな声が聞こえてして
私はその声がした方へゆっくり視線を移す
そこには裸で眠る黒尾鉄朗が眠っていた
しかもなんと自分も素っ裸だったので驚いた
「 ギャヤァ──アァアァ!!! 」
部屋の中に私の叫び声がやたらと響き渡る
どうして私と大嫌いな黒尾鉄朗が一緒に?!
しかも何で2人共素っ裸で寝ていたの!?
パニック状態で布団を掻き集めて肌を隠す
「 何だよ、うっせぇんだよ … 」
黒尾さんは不機嫌そうに眉間にしわを寄せた
あれ?確か昨日ワインを飲んでたんだっけ
それからどうしたんだっけ … 覚えていない
私まさかこの人と変な事してたりしないよね
「 ちょっと!
何で貴方と私が一緒に居るんですか?!
私達って変な事したりしてないですよね? 」
「 はあ?覚えてねぇのかよ
昨日の夜 お前がすげえ酔っぱらっちまって
動けないから運んでくれって澤村に頼まれた
丁度溜まってたし部屋に連れ込んでヤった 」
「 ヤったって一体何を … 」
「 そりゃセックスだろ 」
彼は平然とそう言ってのけ煙草を吸い始めた
── 私とこいつがセックスしたなんて …
初めての人が今1番大嫌いな人だなんて!!
最悪な日だ … 私の王子様はこんな奴じゃない
顔面蒼白で私はベッドに座ったまま固まった