第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
19時になると続々とみんなが降りて来た
各自それぞれ座る場所が決まっている様で
私達は身動きが取りやすい1番端の席だった
2人で手分けして手際良く料理を並べていく
「 ただいま 」
料理を並べて居ると最後の1人が帰って来た
ネクタイを緩め大きなあくびをしている
陽葵ちゃんが優しい笑顔で彼に声を掛けた
「 鉄くん、おかえりなさい 」
「 なんだ今日はハンバーグかよ
しかも俺のはなんでこんな形が歪なんだよ 」
「 それは美雨ちゃんが作ったんだよ 」
陽葵ちゃんがそう言い私の方を指差すと
黒尾さんの鋭い目が私を捉え睨みつけている
── ひいぃい … 怖い!怒られる!?
恐怖で私の体は思わず硬直してしまっていた
「 なんだこの小学生みたいなチビは 」
── 小学生みたいなチビ?!
初対面でチビなんて失礼な人だと思ったが
黒尾さんはきっと少し不機嫌なだけだ
虫の居所が悪いだけで本当は良い人かも
まだ彼を失礼な人と決めつけるのは良くない
「 美雨ちゃんは新しい世話係だよ 」
「 ふうん … 新入りか
及川お前がこのおチビを採用したのか? 」
丁度リビングにやって来た及川さんに
不機嫌そうな黒尾さんが静かに尋ねた
「 そうだよ──!
美雨ちゃんが可哀想だったから拾って来たの
俺って本当に優しくて親切な男でしょ?! 」
「 お前さあ
拾うならもっと色気ある奴を拾えよな
こんな幼児体形の女拾ってどうすんだよ 」
黒尾さんは睨みながら及川さんに詰め寄る
── 前言撤回する、なんて嫌な奴なんだ!
確かに色気もないし幼児体形でもあるけど
初対面でしかも自分だって変な頭のくせに
そんな風に言われたくないんですけど!!