第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
「 あ、賑やかな人が帰ってきたみたい 」
陽葵ちゃんがニッコリ微笑みながら私に言う
男性2人の会話がキッチンまで聞こえてきた
「 ただいまあ──!! 」
「 只今戻りました 」
リビングに現れたのはジャージ姿の男性と
紺色のスーツを綺麗に着こなした男性だった
この2人は私が担当する西側の部屋の住人だ
「 お!見慣れねえ顔がいるぞ、赤葦! 」
「 木兎さん
今朝言ってたじゃないですか …
今日から新しい世話係が来るって 」
「 2人共、こちらは逢坂美雨ちゃんだよ
今日から西側の部屋の担当だから宜しくね
こちらの2人は木兎くんと赤葦くんだよ 」
「 初めましてっ!宜しくお願いします! 」
私が勢いよく頭を下げた後で顔を上げると
吸い込まれてしまいそうな大きな瞳を開いて
木兎くんが私の事をまじまじと見つめている
そんなに見つめられると何だか恥ずかしい
「 美雨!今度俺にご奉仕しろよな! 」
「 へ?! 」
「 だから体でご奉仕を … 」
「 木兎さん、彼女とは一応初対面です
いきなりそんな事を言うなんて下品ですよ 」
「 赤葦!
遅かれ早かれヤるもんはヤるんだから
それをいつ言おうが結局一緒だろうが!
それにお前だっていずれしてもらうだろ? 」
赤葦くんは苦笑いし小さく溜息を吐きながら
着替えて着ますと言い自分の部屋に向かった
木兎くんは俺もシャワー浴びて来ると言い
私達の前から賑やかな嵐は過ぎ去っていった
「 木兎くんはとにかく賑やか
長男の様で実は末っ子みたいなタイプ?
彼がいると本当に家の中が明るいんだあ
赤葦くんは兎に角クールで凄く冷静な人
あの2人は真逆すぎて見ていて面白いよ 」
「 へえ 何か太陽と月みたいですねっ! 」
「 月といえばもう1人居るんだよね
年の割に冷静沈着でクレーバーな人が …
あ … 噂をすれば帰って来たかもしれない 」
玄関の方をチラッと覗くと男性2人が
こちらに向かって歩いて来るのが視界に入る
1人はすぐに写真と実物が一致してしまう
だって眼鏡をかけていたからすぐに分かった
にしても眼鏡くんは背が高くてビックリした