第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
「 よく出来きたな 陽葵はお利口さんや 」
「 もう … 侑くん
美雨ちゃんがビックリしちゃうでしょ?
彼女は今日が初日なんだから驚かせないの 」
陽葵ちゃんがそう言うと彼の視線は私に移る
当の私は今起きた光景に思考が追いつかずに
ボケ──っと間抜けな顔でぼんやりしていた
「 なんやお前も今のされたいんか? 」
「 へっ?!いや!結構でございますっ! 」
「 侑くん?美雨ちゃんをいじめないの 」
私にジリジリと怪しい笑顔で迫り来る彼を
陽葵ちゃんが止めてくれて間一髪セーフ
侑くんはつまらなさそうな顔を浮かべていた
「 ほな陽葵が今日の夜は相手してや? 」
「 分かったよ 」
彼は嬉しそうに階段を駆け上がって行った
普通に見たら2人はカップルに見えるけど
実際はそうじゃないのが不思議でならない
抱き合ってキスしても恋人ではないなんて
お互いどんな気持ちでやっているのだろう?
「 彼は宮侑くんだよ
スキンシップが激しい時もあるけど
誰にでもあんな感じでフレンドリーだから
彼とは嫌でもすぐに仲良くなれると思うよ 」
「 キス … 初めて見ました 」
「 あれはもはや日常光景だよ 」
キスをするのは当たり前って訳なのかな?
私はキスの経験だって当然の様になかった
どんな感触で、どんな味がするんだろう?
興味は大いにあるけどやっぱりキスもH同様
好きな人とするのが私の夢でもあるのだ
侑くんのキス攻撃には気をつけなくては …
「 まだ西側の住人さんが帰って来ませんね 」
「 そうだね
西側の人達はサラリーマンが多いから
帰ってくる時間がだいたい一緒なんだ
そろそろ帰ってくると思うんだけどね 」
時刻はそろそろ18時半過ぎであった
晩ご飯は出来上がり後は並べていくだけ
使った器具を洗っていると玄関の方から
騒がしい声が聞こえ誰かが帰って来た様だ