第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
「 美雨ちゃん──!休憩終わりだよっ 」
陽葵ちゃんが笑顔で階段から降りて来た
私もゆっくりとソファーから立ち上がり
小競り合う2人の間を抜けて駆け寄った
「 今から晩ご飯の準備していくよ! 」
キッチンに行き今日の献立を教えてもらう
今日の晩ご飯のメインはハンバーグだそうだ
それにサラダとマッシュポテトとスープ
人数が多いので品数はそんなに多くないそう
「 私 … 料理があまり得意では … 」
会社の寮に住んでいた時はほぼ自炊せずに
コンビニ弁当やジャンクフードばかりだった
だから殆ど料理をした事がなくて自信が無い
「 大丈夫だよっ!
私が都度教えるし料理も慣れだからね!
じゃあ、美雨ちゃんは野菜を洗ってくれる? 」
陽葵ちゃんはただでさえ女子力高いのに
料理だって出来るんだから完璧な女性だ
陽葵ちゃんみたいなお嫁さんが欲しいよ …
「 ここの人達は肉が好きな人が多くて
あまり自ら野菜を食べたがらないんだよね
だから食事には絶対に野菜を入れてるんだあ
ちゃんとバランス良く食べてもらわないと 」
「 そうなんですね
栄養バランスも考えてるんですか! 」
「 うん、体が資本だからね
でも鉄朗くんだけは魚が大好きなんだよね
だから今日はハンバーグだから怒るかも! 」
陽葵ちゃんは笑いながら野菜を切っていく
住人みんなの好みはバラバラだろうから
献立を立てるのもきっと大変なんだろうなあ
「 全部洗ったらじゃがいもの皮剥いて? 」
「 はいっ! 」
難しい作業は陽葵ちゃんが手際よく行い
私は比較的簡単な作業の手伝いをしていた
大量のひき肉を味付けをして玉ねぎを混ぜて
タネをこねたあとで2人で形を形成していく
「 意外とこれ難しいですね … 」
「 空気を抜くイメージをしてみて? 」
今までハンバーグなんて作った事なんて無い
私が作ったハンバーグは少々歪な形であった
陽葵ちゃんのと並べると下手なのが目立つ …
私は苦戦しながらも人数分作り上げていく
すると玄関から誰かが入ってくる音がした