• テキストサイズ

憂鬱王子はキスをくれない. / ハイキュー

第1章 憂鬱王子はキスをくれない.



撮影は思いの外スムーズに終わってしまい
陽葵は俺達の写真を1枚だけ貰ったそうで
嬉しそうに笑いながら大事そうにしていた

その写真みたいに本物になる事はないけど
きっと良い思い出としては残っただろう。

「 鉄くん、今日はありがとうね 」

「 ああ … いいよ
あんなの着る機会なんて滅多にねえし 」

結婚か …
俺はこれから先結婚する事なんてあるのか?
これから先、杏奈みたいに結婚しても良いと
心からそう思える様な奴に出会えんのかね?

ゆっくり歩きながら家まで向かっている時
外側を歩いていた陽葵の後ろから車が迫る
俺はとっさに彼女の手をぐいっと引っ張り
自分の方へと引き寄せ自分が外側へと回る

「 あ!ごめん … 鉄くんありがとう 」

「 いいよ、危ねえからお前こっちな 」

掴んでいた陽葵の小さな手を離そうとした時
彼女は立ち止まって俺の手を離そうとしない

「 前も … こうやって手を掴んでくれたね 」

陽葵が言っている事が一瞬理解できずに
困惑した表情を浮かべて彼女を見つめた

「 前? 」

「 うん …
私がしつこくナンパされて困ってた時に
突然鉄くんが現れて彼氏のフリしてくれた
怪しまれない様に手を繋いでくれてたよね 」

ああ … 確かそんなこともあったんだっけ?
意識してやった事じゃないから忘れてたわ
あのナンパ野郎えらいしつこかったんだよな
頭の中でぼんやりその事を思い出していると
俺の手を握ったままの陽葵が小さく言った。

「 私ねっ … 本当はあの時から … 」

「 げっ!もうこんな時間じゃん
早く帰らねえとやる事あるんだったわ! 」

陽葵がこれから口にする言葉は分かっていた
恐らく俺に好きだと言うつもりだっただろう
それを察した俺はわざと話題を変えて遮った
言葉にされちまったら関係が変わってしまう
気まずくなってしまうからあえてそうした。
陽葵の表情は一瞬暗くなった様な気もしたが
俺にフラれて落ち込むよりはマシだと思った

/ 142ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp