第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
撮影スタジオの中で陽葵の事を待っていると
彼女の準備が整った様でようやくやって来た
純白のドレスを身に纏った彼女は綺麗だった
「 鉄くん、ごめん。待ったよね? 」
「 ああ … 大丈夫。綺麗だな 」
「 本当?似合ってる?大丈夫かな? 」
「 似合ってるから大丈夫だよ 」
恥ずかしいそうに陽葵は頬を赤らめている
どうしてウェディングドレスってこう …
何でもどうしてでも綺麗に見えちまうんだろ
これが花嫁マジックって呼ばれるものか??
「 鉄くんもいつもより更にカッコイイよ 」
「 サンキュー 」
「 じゃあ撮影開始しましょうか 」
横に並ばされて陽葵は俺の腕に手を添える
笑ってくださいとカメラマンに指示されて
お互いにぎこちない笑顔を浮かべていた。
もし今、俺の隣に居るのが杏奈だったら …
一瞬でもそんな事を考えてしまう俺は最低だ
もし別れてなかったら今頃はこうして2人で
笑いながら並んで歩んでいたかもしれない …
── やっぱり俺って未練タラタラなのかも
てか及川の言う通りなのが感に触るんだけど
あいつ意外と人の事を察するの得意だしな …
そんな事を考えていると陽葵の声が耳に届く
「 ほら!鉄くんちゃんと笑って! 」
「 ああ … 悪い 」
横で楽しそうにはしゃぐ陽葵を見ていると
余計に罪悪感が襲ってきて苦しくなった。
とりあえずこの気持ち治ってくんないかな?