第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
式場に着くと別室で着替えをする事になった
俺に用意されていたのは白いタキシードだ。
着替えをする前にヘアセットを促されたので
鏡の前に座るとスタイリストが寝癖を見て
ギョッとした顔をし慌てて水で濡らし始めた
俺の頑固な寝癖はすっかり綺麗に下りてきて
見事真っ直ぐなストレートヘアーになった。
「 一段と男前になりましたね! 」
「 流石プロっすね … すげえな … 」
髪型だけでこんなに変わるものかと感心した
毎朝時間作ってセットしても良いのかもな
そんな風に思えるくらい良い出来であった
” そんな髪セットしても一緒でしょ?! ”
” 変な髪型の人に言われたく無い … ”
おチビに言われた言葉がふと頭をよぎり
少しだけムッとしながら鏡を見つめていた
俺のこのカッコイイ姿をあいつが見たら
もうそんな言葉なんて出てこねえんだろうな
ほんの少し、早く帰りたいと思ってしまった
って俺はなんであいつの事なんか考えてんだ
鏡の前でブンブン首を横に振る俺の姿を
スタイリストは不思議そうに見つめていた
「 では着替えを済ませましたら
スタジオに移動してもらいますので
終わったらこちらのベルでお呼びください 」
「 分かりました 」
そうして部屋の中に1人取り残された俺は
用意されていたタキシードへと着替え始めた
いつか誰かに白が似合わねえって言われたな
俺にはこうゆう純真な色は似合わねえって …
誰だったっけ、俺にそんな事を言った奴は。
失礼な事を言った犯人を頭の中で探し始める
俺の周りには失礼な奴がいっぱい居るからか
それっぽい候補者がたくさん出てきてしまう
俺に失礼な事を言っても平気そうな奴 … は
頭を回転させながら考えていたらハッとした
── 白が似合わねえって言ったの杏奈だ …