第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
「 鉄くん!ちょっと待って! 」
「 ああ … 悪い、歩くの早かったな 」
小さい陽葵が俺の後ろを必死で付いてくる
何も考えないで歩いていたら気が付いたら
彼女を置き去りにしてしまっていた様だ。
歩く速度を落とし彼女のペースに合わせる
式場までは近くて徒歩で行く事になっていた
久しぶりに運動がてら歩くのは丁度良かった
「 今日って何時くらいに終わんの? 」
撮影がまだ始まってすらもいないってのに
終わる時間を気にするなんて俺って最低だな
そんな風に思いながらもつい口にしてしまう
「 確か夕方までには終わる筈だよ!
終わったらコーヒーでも飲んで帰る? 」
陽葵にとってこれはデートのつもりだろう
全ての願いを叶えてやりたいけど無理だな
だってやりすぎると無駄に期待させちまう。
だから1番デカイ願いだけしか叶えらんない
「 帰ったらやりたい事あるからまた次な 」
「 そっか … 」
「 そんな事で落ち込むなって
これから花嫁衣装着れるんだからさ 」
残念そうな顔をする陽葵を見つめながら
力なく微笑みながらゆっくりと歩いて行く
やりたい事なんてねえけど許せ、陽葵。
式場に着くまでの間は他愛もない話をした
ただし恋愛系の話は敢えて避け続けていた
なるべくおかしな雰囲気にならない為にだ
くだらない話をしていたら式場へと到着した