第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
翌日の朝、いつも通り朝食を取り始める
おチビがげっそりとしている事を除いては
いつもとは何ら変わりない朝ではあった。
卵焼きを頬張っていると陽葵が俺の方を見て
何故かやたら恥ずかしそうにしながら言った
「 そう言えば鉄くんにお願いがあるの 」
「 何、お願いって 」
「 来月なんだけど知り合いから
ブライダルモデルやってほしいって頼まれて
OKしたんだけど相手の新郎役の人がその日
都合つかなくなって代役を探してるんだよね
長身で黒髪が条件だからなかなか居なくて
新郎役のモデル鉄くんにお願いしたいんだ 」
この俺がブライダルモデルねえ …
陽葵がわざと俺を誘っているのは分かってた
けど敢えてそれに気づいていないふりをした
俺が考え込んでいると木兎が声を荒げ始めた
「 黒尾がモデルだとお──?!
それなら絶対に俺の方が良いってば! 」
「 木兎さんは黒髪じゃないですよね 」
「 モデルと言えばやっぱり俺だよね! 」
「 クソカワ お前も黒髪じゃねぇだろうが 」
みんなが騒いでいる中で妖しい笑みを浮かべ
ニヤニヤしているおチビを見つけ睨みつける
俺はふと昨日宮が言っていた言葉を思い出す
” 好きな人から望みを叶えてもらえれば
それだけで満足するってパターンもある ”
── で、どうするよ?俺
「 俺は別にいいけどさ
澤村とかの方が爽やかで良いんじゃね?
黒髪だし身長も俺より低いけど高いんだし 」
「 お前より低くて悪かったな 」
「 黒尾さんって鈍感ですよねェ 」
「 空気読みましょうよ、黒尾さん 」
月島と赤葦は俺の事をからかうように言った
鈍感でも空気が読めないわけなんかじゃない
彼女の気持ちはずっと前から知ってたけれど
気付いてない程の方が彼女が傷付かないだろ