第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
家帰るとおチビはダイエットを決意した様だ
もし痩せたら今まで言った暴言の数々を謝れ
と言われたがどうせ無理だろと内心思いつつ
俺はあっさりその提案を快諾したのだった。
おチビは早速木兎と走りに出かけて行った
俺は珍しくリビングでテレビを見ていた。
するとそんな俺を見た宮が俺に向かって言う
「 最近黒尾くん帰り早いよな
最近は女漁りはもうやめてもうたん? 」
確かに言われてみりゃ最近は毎日真面目に
直帰している様な気もしなくはない様な …
意識していたわけではないがそうかもな
「 別にやめたわけじゃねえけど … 」
「 最近はイイ女がおらんとか? 」
「 言い寄られてねえ訳じゃねえけど
社内は色々やり辛れえから手は出してない 」
宮は俺の隣に座りながらビールを飲んでいた
俺達は特に顔を合わせることなんかはなく
ただテレビ画面を見つめながら会話を続ける
「 その子はどんな子なん? 」
「 普通の子だな
告白されてハッキリ断ったんだけどさ
一度飯に行こうって言われてんだよな 」
「 飯くらい行ってあげたらええやん! 」
「 期待させたらどうすんだよ
それはそれで更に面倒な事になんだろうが 」
ビールを飲み干した後でそう吐き捨てると
宮から思いもよらない言葉が返って来た。
「 逆にさ
好きな人から自分の望みを叶えてもらったら
それだけで満足するってパターンもあるで 」
「 もっと望むんじゃねえ? 」
「 それは脈があればなんちゃう?
はなから無いって分かってるんなら
少しの事でも大抵は満足するんちゃう 」
確かにそう言われてみればそうなのかも …
こいつ時々すげえ冴えてる事言うんだよな
そう思いながらぼんやりと宮の方を見つめた
恐らくこいつもかなりモテる男なんだと思う
だから女心や考えそうな事をよく分かってる
俺が女だったらこいつには絶対行かないな。