第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
深いため息をつきながらデスクへと戻ると
桜井がニヤニヤしながら俺の元へやって来た
また取り調べが始まるのかと苦笑いをした。
「 桜井さんは何だって?
やっぱり先輩の事諦められません!って? 」
「 まあ近い感じだな
どうしたら諦めてくれんのかね … 」
「 やっぱり彼女作りな!
そしたらすぐにでも諦めるでしょ 」
もういっそ嘘でもついちまおうかと思った
ただ今すぐ嘘をついては明らかに嘘くさい
もう少し時間おいて様子見るしかねえか …
にしてもあっさり引き下がるって思ってた
こんなに粘られるとは予想外の出来事だった
「 なあ桜井が彼女のフリしてくんない? 」
「 嫌だよ!
あんたの彼女役なんて絶対したくない!
そんな嘘ついたら婚期が遅れちゃいそう 」
「 そんな露骨に嫌がるかね … 」
しかめっ面で手を横に激しく振っている
桜井の拒否の仕方に若干傷つきながらも
仕方ねえかと薄い笑みを浮かべまたため息
「 そう言えば …
例のプロジェクトのリーダー誰になるかな
そろそろリーダー発表される時期だよね? 」
「 ああ … そうだな。誰になるんだろうな 」
俺の部署は大きなプロジェクトが始まる
今回は結構重要なプロジェクトだからか
リーダーが誰になるか注目が集まってた
まあ俺には関係なさそうな話ではあるが
このプロジェクトでリーダーになって
成功を収められれば将来安泰って所だな
「 リーダーは黒尾なんじゃない? 」
「 俺はないでしょ 」
「 黒尾は分かってないなあ
あんた結構上から気に入られてるんだよ?
だからもしかしたら抜擢されるかもね! 」
俺が上層部から気に入られてるなんて
全くもって思いもしない事であった。
桜井の言葉をあまり鵜呑みにする事なく
俺は目の前の大量の仕事に取り掛かった