第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
「 あんた、大野さんフったんだって? 」
噂とゆうものは何でこう回るのが早いんだ
結果についてまだ誰にも話していないのに
桜井が何で知ってるんだよと朝から苦笑い
「 お前が何で知ってんだよ …
フったなんて人聞き悪りい言い方すんなよ
俺はご丁寧にお断りしただけなんですゥ 」
「 まあ断るだろうなとは思ってたけど 」
「 社内恋愛とか色々と面倒だろ 」
そう吐き捨ててデスクに座り書類を広げた
ドラマで見る様なキラキラした社内恋愛は
こんな現実世界には無いと俺は思っている
「 ちょっと … 黒尾!大野さん来てるよ 」
桜井の声で顔を上げ部署の入り口に目をやる
そこには恥ずかしそうに顔を赤らめている
大野さんが立っていて俺と視線がぶつかると
会釈をしちょっと良いですかと手で合図した
「 朝からモテるね、黒尾先輩 」
「 五月蝿えよ 」
呼ばれたので立ち上がり彼女の元へ向かう
もう朝からなんなんだよと不機嫌になった
家だったらそのまま不機嫌に接する所だが
会社なので貼り付けた笑顔を浮かべ出て行く
「 何か用か? 」
「 昨日のっ … メールの件ですが … 」
「 ああ … 飯の件?今さ忙しく … 」
「 はい!今すぐにとは言いません
ただ … もし黒尾先輩の癒しになれるなら
私 … そのっ割り切った関係でもいいです 」
大野さんは顔を凄く真っ赤にしながら言った
彼女の言葉に驚いて開いた口が塞がらない
この子は自分が言っている意味分かってる?
「 えっと … ごめん。
ハッキリ言うんだけど面倒なの嫌いでさァ
そんな申し出有難くない訳じゃないけど
気持ちがあるとのちのち辛くなるだろ?
俺は面倒にならない子としかしない主義 」
ここまでハッキリ言えば分かってくれるだろ
それに自分の発言もなかなかえげつなく辛辣
いっそ最低だと思ってもらったって構わない
そう思っていたが彼女は食い下がる事はない
俺の目をただ真っ直ぐ見つめながら言った。
「 面倒にならない様にしますからっ!
黒尾先輩が良い時にでも連絡ください!
会社でこんな事言ってすみません…では! 」
彼女は言いたい事だけ言って去って行った
自分からわざわざセフレにして下さいなんて
言う女は珍しいし変わっているなと思った。