第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
定時の17時になり俺は総務課へと向かう
桜井に言われた通り彼女に返事をする為だ
普段ほとんど顔を出す事がない課に来ると
少々目立ってしまい周りの視線が突き刺さる
「 大野さん居ます? 」
「 黒尾先輩!どうしてここに … 」
「 ちょっと話があんだけど今良い? 」
総務課に顔を出すと大野さんが顔を赤くし
小走りですぐに俺の元へと駆け寄ってくる
彼女もここじゃ周りの視線が気になる様で
俺達は人気のない場所までと移動してきた
「 急に来ちゃってごめんな 」
「 いえ … 大丈夫です …
それでその … 話って言うのは何でしょう 」
「 この間の返事なんだけど …
俺、社内恋愛とかするつもり無いんだわ
それに今は恋愛してえ気分じゃねえし …
だから大野さんと付き合うのは無理かな 」
俺の言葉を聞いて今にも泣きそうな大野さん
ああ、頼むからここで泣いたりすんなよ …
そう思いながら彼女の事を見つめていると
大野さんは俺を待て力なく笑いながら言った
「 先輩は彼女は居ないんですよね? 」
「 ああ、うん。
今は特に彼女とかは居ねえけど … 」
「 じゃあ … 私は諦めません 」
「 いやいや大野さん? 」
「 だって彼女も居ないんですし
先輩がその気になるまで諦めませんから! 」
俺が口を開く前に彼女はそれだけを言い残し
逃げるかの様にその場から猛ダッシュで去る
おいおい … どうしてそうになっちゃうんだよ
そもそも社内恋愛しないって言ってんだしさ
普通ならそんな事言われたら諦めるだろ??
残された俺はため息を吐き会社を後にした