第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
「 行ってくるわ、んじゃお先─! 」
リビングで未だに飯を食っている連中に
一言声を掛け玄関へと向かおうとしたら
陽葵が見送るねと言い俺の後をついてきた
嫌な予感はしたけれど来んなとは言えない
シューズインクローゼットを覗いていると
俺の嫌な予感ってのは簡単に当たってしまう
「 鉄くんもメイドに奉仕させるんだね 」
「 たまにはな … 溜まってたし 」
「 私には … 頼んだ事なんてないよね … 」
「 そうだな、頼んだ事ねえな
でも俺は手荒いから頼まれねえ方がいいよ 」
俺に頼まれてえって顔に書いてあるから
陽葵の顔を見ること無く靴を静かに履く
陽葵が俺を好きな事は薄々気付いていた
感情を持っている奴を相手を抱いたりすると
のちのちに絶対厄介な事になりかねねえから
俺の気持ちが同じでない場合は手を出さない
これが女性を扱う際の俺のポリシーであった
陽葵はそれに気付いている様な気がしていた
「 手荒いって …
そんな事言われたら逆に気になるじゃん! 」
「 気になんなって
お前みたいなタイプは耐えらんねえから
んじゃ、俺は行くわ!行ってきま─す! 」
少し拗ねた様な態度で俺を上目遣いで見る
陽葵は無意識だろうがあざといんだよな …
このまま陽葵とこの話を続けていたりしたら
勢いで抱いてよなんて言いかねない気がして
俺は逃げる様にしながら玄関から出て行った