第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
リビングに向かうとおチビが頭を下げている
どうやら寝坊した事を謝っている最中の様だ
俺は気だるい体を引きずりながらも席に着く
「 プロ意識無さすぎデショ 」
ツッキーは今日はいつにも増して辛辣だった
ごもっともではあるが俺にも少しは非はある
余計な事は言うまいとそう思っていたのに
空気の読めない木兎が余計な事を言い始めた
「 今日は仕方ねぇよなあ?
黒尾が美雨を喰い散らかしてたんだからな! 」
「 黒尾さん手が早いんですね 」
木兎は悪びれもなく平気で事実を述べている
赤葦は表情を変える事なく話に入ってきた
別に隠すつもりもねえけどタイミング悪すぎ
「 うっせぇな──溜まってたんだって 」
すかさず言い返してご飯を口一杯に頬張った
その時、陽葵がこちらを見つめていたけど
あえて気づいていないふりをしてスルーした
── 美雨ちゃんには手を出すんだね
きっとそんな風に思っているのは分かってた
言葉には出さないけど瞳がそう訴えている
俺を見つめる陽葵におチビが急に声を掛けた
「 陽葵ちゃん … 本当にすみませんっ! 」
「 あれだけ飲んでたし仕方ないよ
それより昨日はあのまま寝ちゃったでしょ?
仕事始める前に先にシャワー浴びておいで?
髪の毛ボサボサだから綺麗にしなきゃねっ 」
「 ありがとうございますっ! 」
ボサボサの髪の毛によれよれの化粧の顔で
嬉しそうな笑顔を浮かべると勢いよく立ち
おチビは猛スピードでシャワーを浴びに行く
俺はその姿を味噌汁をすすりながら見ていた
すると木兎が見計らった様に俺の顔を見た
「 な!美雨の体はどうだった?! 」
「 お前な … 朝からやめなさいよ 」
澤村が心底呆れながら木兎を見つめている
木兎はそう言われて諦める奴ではないのだ
俺はそれを知っているから答えるしかない
「 別に─?普通 」
「 普通ってなんだよ?!
なんかもっと良い感想がある筈だろ? 」
「 だったら自分で確かめりゃいいだろ 」
俺は飯を半分程残すと早々に席を立ち上がる
全部食いたかったけど寝坊してしまったから
時間が無く珍しく飯を残す羽目になったのだ