第1章 憂鬱王子はキスをくれない.
「 つかさあ
クビになるってちゃんと仕事してたのかよ
今時クビになる方が珍しいくらいなのによ 」
俺は自分の仕事に誇りを持っているし好き
クビになるには何かしらの理由がある筈で
被害者ぶっている姿に腹が立ったのだろう
すると西側の住人達がそれぞれ口を開いた
俺以外にも厳しい奴らがこちら側にも居た
「 確かに
20歳にもなって貯金が全く無いのも
僕はどうなんだろうって思いますケド 」
「 俺でも貯金してるくらいだぞ!! 」
「 計画性が無かったって所ですかね 」
東側の住人達とは違い西側の住人の言葉は
全員揃って辛辣かつ厳しい言葉ばかりだった
現実的でかつ的確な意見を淡々と言い放った
これは自分で言うのもなんだが西側の住人は
曲者ばかりが揃っているからさぞ扱い辛い筈
「 精々この仕事もクビになんない様になァ 」
「 黒尾さんそんなに苛めたら
新人さんが可哀想じゃないですかァア─ 」
「 まあまあ!仕方無いじゃないか
貯金なんて今からいくらでも出来るんだし 」
ツッキーもなかなか良い性格の悪さしてんな
俺も負けず劣らず性格は悪いと自覚はあるが
ツッキーにだけはどうにも勝てそうにねえや
「 サームラくん、女にモテるでしょ 」
「 俺?全然モテないけど
黒尾の方が俺なんかより全然モテるだろ 」
「 澤村は優しいじゃん
さっきお前が掛けた優しい言葉のせいで
あいつが泣きそうな顔してたの見たか? 」
「 本人が1番分かってるだろうし
だから敢えて俺は言わなかったんだけど …
お前は本当に現実的と言うかなんと言うか …
まあそれが黒尾の良いところではあるけどさ
あんまり美雨ちゃんを苛めたりすんなよ? 」
「 へ─い 」
俺は赤ワインを片手に気の抜けた返事をした
飲み始めて数時間経つと出来上がった奴が
ちらほらで始めていたが俺はほぼシラフだ
俺と及川と赤葦と岩泉辺りは酒が強かった
酔っ払っている木兎や宮が騒いでいる中で
既に潰れて眠った奴が1人居た、おチビだ
言わんこっちゃないと苦笑いして見ていると
菅原がそれに気が付いて俺に向かって言った