第2章 ブロック②
「…ん―――」
天童くんは私の胸の中で呻いていた。へ、変なことを言い過ぎてしまった…!!どうしよう、彼女持ちの後輩になんてことを言ってしまったんだろう。というか私は別に天童くんのこと好きでもないのに何を言って―――
「…じゃあ、恋人らしいことでもする?」
スっと私の腕の中から離れた彼は途端に男の子の顔になった。いつもと同じ天童くんに見えるけど、同じじゃない。目が少しだけ濡れていて、獲物を求めるような視線。
「…コレ、結局使えなかったしね」
彼がポケットから取り出したモノは流石に経験のない私にでも分かった。薄くて小さな四角いビニールに包まれたもの。
「…あ、えっと……」
「……そんな照れちゃって。煽ってんの」
私の左手を天童くんはそっと掴んだ。恥ずかしすぎて下を向いた私の顔を凝視している。居た堪れない空気だ。世の中のカップルはこんなことを毎回やっているのか。耐えられなくなって先輩風を吹かせて逃げようと思った瞬間、
「んんっ」
私の後頭部に手を回した天童くんが思いっきり引き寄せて唇を合わせてきた。柔らかくてフニフニしてる。いつもよく笑ってる彼の口元が今は全然思い出せない。
「やっ、天童く」
「…恋か分かんないけど、気持ちいことならシてあげれるよ?」
緑川ともしたのかな。頭の中でうっすらと浮かんだ疑問。そりゃしてるか。こんな時間に二人で会ってたわけだし……って思った瞬間、よく分からないけど悔しいと思う自分がいた。なぜだか分からないけど天童くんに今この瞬間だけは私を感じてて欲しい。
「…いいよ、続きして」
私がそう言うと自分から強引にキスしてきたくせに天童くんは目を丸くしていた。
「…俺、いま誰でもいい気分なんだけど」
「だから、いいってば」
「止めないよ?」
「…うん」
私達はその言葉を最後にまた唇を合わせる。どちらからキスしたのか分からない。お互いに求め合って自然と近づいたように感じた。
お互いに自然と唇を開き、天童くんの舌が入ってくる。思ってたよりも気持ち悪くない。ううん、むしろちょっと気持ちいいかも。それでも自分から絡めるのは怖くて天童くんにされるがままになっていた。