第4章 ブロック④
「…ふーん。そっか」
天童くんの言葉が本当かは分からない。だってこの子は気まぐれだから。それでも――――いいんだ。天童くんがそう言うんだったら。それぐらいあの日のことは私にとって特別な夜だった。
天童くんは私の顔を見て、らしくもないけど少し不安そうにしている。いつもいつも揶揄われてばっかりだから、たまにはこういうのもいいかもしれない。
「…ちょっと。俺だけに恥ずいこと言わせないでヨ。はるか先輩はどう思ってんの」
まだ一年生のくせに全てを悟ったような顔をして。それなのに不安定になったりして。放っておけない。自分が好きなものには真っ直ぐにしか進めない君が――――
「天童くんの全部が好きだよ」
「………あらまあ」
正直に全部言うよ。どうせ嘘は通じない。だから聞かせて欲しい。
「…天童くんって私のどこが好きなの?」
「……ん~~~~甘いところ?」
「は?」
「俺に甘いところ。俺ね、やっぱ王子様はできないんだわ。甘やかしてくれないとダメ。あとは……やっぱ甘いところ」
そう言って天童くんは私の腕を引っ張った。唇に突然キスが落とされる。
「……ほら、やっぱ甘い。こんな甘い人いないヨ」
「それぐらい私が好きってことじゃない?」
「……マジでやめて」
フイっとそっぽを向いた彼だけど、私の手は握ったままで指をガシリと絡めてくる。
「…はるか先輩、次のオフいつ?」
彼の気まぐれが続いている間は、ずっとずっと側にいたい。
だから祈る。気まぐれが1秒でも長く続きますようにと。
~fin~