第2章 ブロック②
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「…俺、先輩のこともう馬鹿にできないかも」
天童くんが私を連れてきた場所は誰も使っていない和室だった。埃っぽい匂いが充満し、破れた障子はそのまま放置されている。窓から月の光だけが差し込んでいてとても薄暗い。
部屋がとても暗いから天童くんの表情はあまり見えないのだけど、声色がとても落ち込んでいる。
「緑川となんかあったの?牛島くんにデート邪魔されちゃって落ち込むのは分かるけどさ…」
正直、私に恋愛相談的なことをされても何も分からないので困るのだ。デート邪魔されるのってそこまで落ち込むことなのかな。付き合うって大変なんだな…なんて考えていると、
「…俺さ、なつみちゃんのこと好きだよ。でもどう好きなのか分からないんだよね」
「はあ。いいんじゃない?緑川可愛いし。緑川も天童くんのこと好きっぽいじゃん。というか好きなはずでしょ」
そう言った瞬間、彼の肩がビクっとして空気がピリつくのを感じた。そういえば以前もそうだった。どっちから告白したのか聞いた瞬間、彼は苛々とし始めたのを思い出した。
「……先輩には分かんないよね、好きな人もいないじゃん」
そう言って私を見つめる彼の目は泣きそうに見えた。天童くんみたいにモテる男の子でも恋愛に悩むことがあるんだな。なんだかそう思った瞬間に、私は自分でも信じられない行動に出ていた。
「………えっと先輩、何してんすか」
気付いた時には彼の頭を抱き締め、髪を撫でていた。なんでこんなことしてるんだろう。可哀想に見えたから?傷付いて見えたから?
「…ねえ、天童くん」
天童くんに問い掛けられた言葉への答えが出ない。頭では何も答えが出ていないのに、口からは信じられない言葉を発していた。
「…私に、恋、教えてくれない?」